高圧受変電設備の耐用年数とは?交換の目安や長持ちさせるポイントを解説

ビルや工場、施設などで欠かせないのが「高圧受変電設備」です。電力会社から送られてくる高い電圧の電気を、安全に建物内へ届けるために必要な設備ですが、「この設備ってどれくらいもつの?」「いつか取り替えないといけないの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。


設備機器にはどれも寿命があり、特に電気に関わる機器は、使い続けることで性能が落ちたり、安全性が不十分になったりすることがあります。見た目には問題がなさそうでも、内部では劣化が進んでいることもあるため、一定の年数が経った設備には注意が必要です。


この記事では、高圧受変電設備の一般的な耐用年数や、劣化のサイン、更新の目安などについて、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。まずは、耐用年数の基本的な考え方から見ていきましょう。




一般的な耐用年数とその根拠

高圧受変電設備には、さまざまな機器が含まれており、それぞれにおおよその「耐用年数」が決められています。この耐用年数は、メーカーが定める推奨使用期間や、法律・制度で定められた基準などをもとにしています。


たとえば、設備全体としての耐用年数はおおむね15年から20年が目安とされています。これはあくまで目安であり、設置環境や使用状況によって前後することもありますが、20年を超えて使い続ける場合は、定期的な点検や一部機器の更新を考え始める時期といえます。


その中でも特に劣化が早いとされるのが、遮断器(ブレーカー)や避雷器など、繰り返し動作する部品や、外部からの影響を受けやすい部分です。こうした機器は10年程度で性能の低下が見られることもあり、計画的な交換が勧められています。


また、税法上の「減価償却資産」としての耐用年数も目安のひとつになります。高圧受電設備は原則15年とされており、これは会計上の資産管理においても、設備更新を意識する時期と一致します。


「まだ動いているから大丈夫」と思っていても、内部の劣化や絶縁性能の低下など、外からは見えない部分でトラブルの芽が育っている可能性もあります。だからこそ、耐用年数をひとつの指標として、早めに点検・更新を検討することが、長く安全に設備を使い続けるための第一歩となります。




耐用年数を左右する要因とは

耐用年数は、単に「時間が経ったかどうか」だけで決まるわけではありません。実際には、その設備がどんな環境で、どのように使われてきたかによって、大きく変わることがあります。


まず影響が大きいのが「設置環境」です。たとえば、海の近くや工場地帯など、湿気やほこり、腐食性の物質が多い場所では、機器の金属部分や絶縁材の劣化が早まる傾向があります。また、屋外に設置されている場合、直射日光や雨風にさらされることで、ケースや配線の劣化が進行することもあります。


次に「使用頻度」も重要な要素です。遮断器などは動作回数が多くなると、そのぶん部品の摩耗も進みやすくなります。頻繁に電源の切り替えを行うような施設では、同じ年数でも劣化の進み方が異なります。


さらに、「定期点検の有無」も耐用年数に直結します。きちんとした点検や整備を行っていれば、劣化を早期に発見し、部分的な修繕で済ませることができます。反対に、長年ほとんど点検されていない場合は、見えない不具合が蓄積し、急に設備全体が故障するリスクも高まります。


このように、耐用年数はあくまで目安であり、実際には現場ごとの状況に応じた判断が必要です。見た目がきれいでも油断は禁物。使い方や環境に応じて、適切な時期に見直しを行うことが、設備の安全と安定した運用につながります。




点検・保守が重要な理由

高圧受変電設備は、建物に電気を安定して届けるための心臓部ともいえる存在です。その性能を長く保ち、事故や故障を防ぐために欠かせないのが、定期的な点検と保守です。


設備は、使っているうちに少しずつ劣化していきます。たとえば、絶縁体のひび割れや、内部の湿気によるサビ、接続部のゆるみなど、外から見えにくいところで不具合が進んでいることがあります。こうした小さな異常を早めに見つけて対応することで、大きなトラブルを防ぐことができます。


点検の頻度は、一般的に半年に1回、または年1回が目安とされており、電気主任技術者などの専門資格を持った方による点検が必要です。特に高圧設備は感電や火災のリスクがあるため、専門家の目で細かくチェックすることが法律でも求められています。


保守には、部品の清掃や増し締め、必要に応じた部品交換などが含まれます。中でも経年劣化しやすい避雷器やコンデンサ、遮断器などは、定期的に交換することでトラブルを未然に防げます。


点検記録は残しておくことで、次の更新時期の目安にもなり、計画的な設備管理につながります。「いつ、どの部品を交換したか」が分かっていれば、急な不具合のときも原因の特定がしやすくなります。


こうした日頃の点検と保守は、安全だけでなく、結果として修理費用や停電のリスクを減らすことにもつながります。安心して設備を使い続けるためには、欠かせない取り組みです。




交換や更新の目安時期と判断ポイント

設備をずっと使い続けていると、「そろそろ取り替えた方がいいのでは?」と感じる場面が出てきます。ただ、どのタイミングで交換や更新を行うべきかは判断が難しいところです。


基本となるのは、設備導入から15年〜20年が経過したタイミングです。メーカーの推奨期間や税法上の耐用年数も、このあたりに設定されています。もちろん、使用状況や点検履歴によって前後するため、一律に「○年で交換」とは言い切れませんが、20年を超えると故障のリスクが高まるため、注意が必要です。


もう一つの目安は、点検時に見つかる異常や不具合の頻度です。点検のたびに修理や部品交換が必要になってきた場合、それは「設備全体の寿命が近い」サインかもしれません。小さな修理を繰り返すより、更新してしまった方が安全で経済的なこともあります。


さらに、電気の使用量が増えたり、新しい機器を導入したことで、現在の設備では対応しきれなくなっている場合も、更新の検討が必要です。容量が不足すると、電圧が安定しなかったり、ブレーカーが頻繁に落ちたりする原因になります。


更新にはある程度の費用がかかりますが、急な故障で全停止するリスクや、その後の修理対応に追われることを考えれば、前もって計画的に進めた方が安心です。判断に迷うときは、まず信頼できる業者に相談し、現状の設備状況を正確に把握するところから始めましょう。




長く使うために心がけたい保守方法

高圧受変電設備を長く安全に使うためには、日頃のちょっとした心がけが大切です。まずは、定期的な点検を怠らないこと。異常が見つからなくても、記録を残すことで将来の設備更新の判断材料になります。


また、設備のまわりを清潔に保つことも大切です。ほこりやゴミがたまると、湿気と合わさって絶縁性能が落ちたり、サビの原因になったりします。換気や防湿対策を取るだけでも、劣化の進行を遅らせることができます。


設備に触れるのは資格を持つ専門家に限られますが、建物の管理者として、日常的に設備の音やにおい、表示灯などに異変がないか注意しておくと、異常の早期発見につながります。大切なのは、「まだ大丈夫」ではなく「念のため見ておこう」の気持ちです。